「CR-185」とトコトン付き合う
第八話:CDが読めないとベルト交換?

大人気の「ONKYO/CR-185」について、 これから10話にわたり、その構造や故障への対処方法等について、より詳しく説明させて頂きます。そして、より深く「CR-185」を知って頂き、より快適に、そして、「CR-185」と真正面から向き合って下さい。このズングリとした容姿が、可愛らしく見えてくるのが不思議です。

 

第一話:「CR-185」って、何?
第二話:音飛びがする
第三話:表示が暗い
第四話:ボタン操作が変?
第五話:「CR-185」の故障と原因の関係
第六話:簡単ニコイチ、やってみる?
第七話:CDが中に閉じ込められた!
第八話:何故、CDが読めないとベルト交換するの?
第九話:本体だけで操作
第十話:「CR-185」を更に深く知る

第八話:何故、CDが読めないとベルトを交換するの?

この連載を始めようと思ったキッカケであり、「CR-185」に限らず、殆どのCDプレーヤーに共通の知識です。構造の違いはあれ、基本的概念は同じです。

 

それにしても 不思議な話です。ベルトとは、トレーを開閉させる駆動力の伝達に使うもの。CDを読むのは、ピックアップという部品。そして、その因果関係は? そもそもCDプレーヤーとは、精密機器でありながら家電製品(=コストダウンが宿命)です。如何にコストダウンするかが常に求められています。前置きはいいから、早く話を進めろ!ハイ。つまり、ベルトとは、トレーを開閉させるためにあるもので、モーターといくつかのギア(モーターの位置関係と動作スピードの調節のため)を用いてトレーを開閉させます。ごく一般的な使い方です。ところが、最後には、CDを回転盤の上に乗せてトレーから浮かせ、ピックアップとの適切な位置関係に精度よく固定する必要があります。この最後の動作が、CDを認識する一番重要な機構なのですが、この動作も、複雑なメカ構造を使い、同じベルトの駆動力を使っています。ベルトが伸びてくると、トレーが最後まで閉じて、一見正常に動作が完了したように見えながら、上手く動作しない(=CDが読めない)という現象が起きます。
この構造が理解できていない場合に、中にCDが閉じ込められた時に、ドライバーをトレー口に引っ掛けて強引にトレーを引き出そうとして、部品を壊してしまう事になります。部品が壊れてしまったら、もはや正常への道は完全に閉ざされてしまいますね。

 

ここが、CDプレーヤーが精密機器と言われる所以であり、CDプレーヤーの勘所的機構であり、故障の原因を探る一番重要な知識となります。この因果関係を理解した時、貴方のメンテナンス知識は、大きな壁を越えた事になると思います。

 

それでは、トレーが本体の内部に引き込まれてからの内部の動きについて、説明しましょう。

(1)「OPEN/CLOSE」か「PLAY」ボタンを押すと、先ずは、ピックアップが中心(TOC情報が書き込まれている位置)に向かって移動します。所定の位置まで移動すると、リミット・スイッチ[1]がONとなり、ピックアップ移動用のモーターが停止します。

(2)CDを乗せたトレーが中に入り、CDの中心が、CDを回転させる円盤の中心と一致する位置まで、トレーは移動します。

(3)トレーの裏側に特殊な細工がしてあり、内部にもメカを上昇させるための特殊機構があります。トレーが終点に近づくと、ピックアップが組み込まれているメカを上昇させます。上昇が完了すると、これを感知するリミット・スイッチ[2]がONとなり、トレー駆動用のモーターは停止します。

(4)ピックアップ・メカが上昇すると、上で待っている円盤の中に永久磁石があり、下からのCD回転用の金属製円盤を固定させます。そして、その回転用の円盤と同じ中心位置にCDが挟まれ、内部でCDが回転フリーの状態になります。CD回転用の円盤(CDの相対的高さを決定する)とピックアップの高さは、同じメカに組み込まれていて、固定されています。こうして、CDの位置とピックアップの位置が、所定の位置関係になるのです。

(5)ピックアップのレーザー発光が、(3)と同じリミット・スイッチ[2]を監視していて、ONになるとCDの存在確認のために、レーザーを発光させます。

(6)レーザー発光の結果、CDがあると判断(CDから反射されたレーザー光を受光)すれば、CDを回転させTOC情報を読み取ります。ピックアップも正常であれば、ディスプレイに演奏時間が表示され、CDは回転を停止します。

参考YouTube:[PONY-修理] PU(ピックアップ)メカ解説

 

それでは、ベルトが弱くなってくるとどうなるのか。(1)は、問題無く完了する。(2)も、多少の伸び程度であれば、問題無く移動を終えるでしょう。問題は(3)にあります。ピックアップ・メカを上昇させるには、それなりの駆動力が必要となり、伸びたベルトでは、十分な位置まで上昇させる事が出来ずに、上昇の途中で止まってしまいます。その結果、リミット・スイッチ[2]がONとならず、(5)の動作が始まらないので、CDが読めないという症状となります。また、(4)の動作が不十分な場合には、所定の位置関係とずれた位置でCDが固定されるので、TOC情報が上手く読み取れないという事もあります。

 

正常な状態で固定されれば、CDは手で軽く回りますが、ずれて固定されると、回転しないです。また、話はややこしいですが、ベルトが伸びていてもメカ接触部分がスムーズであれば、弱い力でも必要な駆動力が得られますが、グリスが固着状態になっていたり、メカやギアのタイミングがずれていたりすると、新品のベルトに交換しても上手くいきません。

 

しかしながら、この細かな動きのどこに問題が発生しているのかなんて、分からない。ところが、本体の横に耳を付け、これらの僅かな音を聞く事によって、問題が分かるのです。本当に微かな音です。まさに、愛する我が子の胸に耳を付け、鼓動を聞くのと同じ要領です。

 

(1)は、モーターが動くので、その音で動いているのか、止まったのかが分かります。「ギギッ」なんていう音は、(1)が上手くいっていない事を示します。

(2)~(3)では、トレー駆動用のモーターが停止したかどうかで分かります。停止していないと、トレーが閉まってからも、中で「ウーン」とモーターが唸っています。

(4)この動作が正常であれば、かなり元気な音(つまり、永久磁石が全面で接触した音)で「カチャッ」と音がします。元気がない音であれば、正常な位置関係にないと言う事です。

(5)小さい音ですが、ピックアップが上下動する「カチカチ」という音が、数回聞こえます。「カチカチ」と2~3回の音であれば正常範囲内、「カチカチ、カチカチ、カチカチ」と間を空けて何回か聞こえる場合には、ピックアップがCDの存在を確認しようと、リトライしています。

(6)CDが認識されれば、CDが回転する音も聞こえてきます。ピックアップが劣化していたり、他の異常があれば、嫌な音がする事もあります。

 

一番重要な事は、上記の動作において、正常な場合に、どんなタイミングで、どんな音がするのかを知っておく事です。これを知っていれば、異常が起きた場合にも、その動作や僅かな音の違いによって、どこまで正常に進んでいるのかが分かります。

 

一度、愛機の声にも耳を傾けてやって下さい。

 

ここでお気づきの方がいらっしゃるでしょうか。リミット・スイッチ[2]の接点が接触不良を起こしたら?そうです、ベルトも交換した、ピックアップも固定動作にも問題は無い、なのに「CDを認識しない」という症状が現れる事を。これが起きているかどうかは、CDが手で軽く回転する状態にありながら、トレー駆動用モーターは停止しません。

 

次回は、リモコンがない場合に、本体だけで操作できる機能の紹介です。
第九話:本体だけで操作

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