「CR-185」とトコトン付き合う
第一話:「CR-185」って何?

大人気の「ONKYO/CR-185」について、 これから10話にわたり、その構造や故障への対処方法等について、より詳しく説明させて頂きます。そして、より深く「CR-185」を知って頂き、より快適に、そして、「CR-185」と真正面から向き合って下さい。このズングリとした容姿が、可愛らしく見えてくるのが不思議です。

 

第一話:「CR-185」って、何?
第二話:音飛びがする
第三話:表示が暗い
第四話:ボタン操作が変?
第五話:「CR-185」の故障と原因の関係
第六話:簡単ニコイチ、やってみる?
第七話:CDが中に閉じ込められた!
第八話:何故、CDが読めないとベルト交換するの?
第九話:本体だけで操作
第十話:「CR-185」を更に深く知る

第一話:「CR-185」って、何?

初代「CR-185」は、1995年に、今や一番人気メーカーとなったオンキョーから発売され、定価は41,000円(税別)でした。カタログによれば、「INTECのいちばん小さなカタチ」とありますが、今となっては結構なサイズです。まだ基板の集積技術が未完成だったのか、中身はギッシリです。当初のラインナップは、CDチューナーアンプ「CR-185」、カセットデッキ「K-185」、スピーカーは「D-052A」か「D-102A」となり、「MD-185」も「D-032A」もありません。あれっ?

 

「CR-185」の主な仕様

 【アンプ部】
  ・定格出力:20W+20W(4Ω)
  ・全高調波歪率:0.2%(1kHz,定格出力時)
  ・S/N比:100dB(TAPE/MD)
 【チューナー部】
  ・受信周波数 FM:76~90MHz、AM:522~1629kHz
  ・感度(FM):19.2dBf
  ・SN比(FM):78dB(MONO)、72dB(STEREO)
 【CD部】
  ・周波数特性:5Hz~20KHz
  ・D/A コンバータ:1bit方式
 【共通】
  ・入力端子:MD入力×1系統、TAPE入力×1系統、FM/AMアンテナ×1系統
  ・出力端子:デジタル出力×1系統、MD出力×1系統、TAPE出力×1系統
    スピーカー×1系統
  ・外形寸法:185(W)×130(H)×340(D) / 4.0kg

二代目は「CR-185II」(発売年不明)で、三代目は1998年発売の「CR-185X」。「CR-185X」では、一部の部品が省略されている代わりに、ボリューム・ツマミがアルミ製、ロゴ・マークが格好良くなった。さらに、「CR-185LTD」と「CR-185NL」というリミテッド・モデルが存在するが、どれも同じ音傾向。弊方の駄耳では、その違いは明確には分からないが、通常、メーカーが後継機に求めるところは、コストダウンと内在する不具合への対応。であれば、もしかしたら、初代が一番の良音かも知れない。そう思って、メンテナンスを続けていると、確信めいたものになってきた。


「FRシリーズ」の登場と共に、本シリーズは終焉を迎える事となる。ところが、MD不要の声が多かったのか、8年もの長い歳月を経て2006年に「CR-D1」として、この「CR-185」のコンセプトは復活する。勿論、デザイン含めて、大幅な手直しが入ったのは、言うまでも無い。

音は、確かに良いと思う。とあるお客様からは、「寝室に置く予定で購入したが、あまりにも音が良いので、メイン機をどけてリビングの一番良い所に置いた」という報告がある。また、「C-705」よりも良い音がするとも。澄み切った高音、歯切れの良いシンバルやギター、締まったベース音など。これに同シリーズやFRシリーズのスピーカーを組み合わせれば、信じられない程の良音が得られる。「夜空に輝く満天の星」の如き高音は、どのメーカーも太刀打ちできない、真にオンキョー・サウンドとなる。さらに、「S.BASS」と言う超低音を増強するスイッチがあり、これをONにすると、信じられない様な低音が、小さなスピーカーから出力される事になる。デノンなどと比べると、エネルギー感はやや乏しいかもしれないが。「ながら的」に聴くにはオンキョー、腰を据えて一つ一つの楽器の音色を楽しむにはデノンかソニー、そんな感じか。他の機種の方が好きだと言う方は、音質的性能差ではなく、音傾向の好き嫌いか、相当の利き耳のあるマニアだと思う。その位に、良い音がする。

「CR-185」の欠点は、故障が多い事。主な原因は、CDメカにあります。このメカは、既に発売されている「INTEC275シリーズ」(C-710M等)と共通、なのに何故「CR-185」で多発するのか。あくまでも個人的な推測だが、「アンプ」機能を付加した事に起因するのでは。即ち、上部に開いている放熱孔である。ここから入り込む埃などが、メカに多大な悪影響を及ぼした。「C-710M」などは、トレー開閉口を除いて完全密閉である。チリは、空間に漂い、小さな放熱孔から少しずつ中に入り込み、静かにメカの上に蓄積されていく。潤滑材として塗られているグリスにも混じり込み、やがてグリスは固形化していく。内部に熱が籠るのもマズイ。グリスなどの水分を蒸発させ、硬化させてしまうか。これが、ベルトへの負荷を増し、ベルト由来の故障を誘発する。

もう一つの原因が、CDを上から押さえる円盤。円盤を支える板と円盤の間にスポンジ状のものが張り付けられている。スポンジが徐々に吸湿し、ゴム化(軟化)し、経年と共に、円盤と板を固着させてしまう。暫く使わないで、押し入れなどに放置すると、必ずと言って良い程の確率で、固着してしまうだろう。そして、「CDが認識できない」という症状となって現れる。

さらに状況を悪くしたのが、他の機種でも多く採用されている「KSS-240A」というピックアップである。これまでの経験でも、もともと「KSS-240A」は「音飛び」を発症し易い上に、この「CR-185」の上記の埃の問題や経年的劣化が、さらに発症を早め問題を複雑化させていると思われる。

「音飛び」の原因と改善方法については、次回にて。

加えて、多い故障がリミット・スイッチの接触不良。良く、「トレーがすぐに閉じてしまう」とか、「中でギギッと異音がする」などは、このスイッチの接触不良の事が多い。ソニー・タイマーと良く言われるが、オンキョー・タイマーなるものも存在するのではないかと思う程。つまり、故障原因の殆どが、経年によってもたらされるであろうという事実。コストダウンが使命の昨今では、仕方が無いのであろうか。

 

一方では、ベルト交換の修理例が、ネットで沢山掲載されている。しかしながら、弊方が相談を受けるのもまた、この辺りの事である。トレーが動かなくなった、ラジオがおかしくなった、ケーブルがめくれてしまった・・・。修理しても上手く行かなかった方々からの応援依頼の声である。この機械は、簡単な様で、マニュアル無しでは、なかなか手強い。一番の問題は、手を加える度に、分解・組立を繰り返さねばならない事。この修理屋ならぬデストロイ屋的行為によって、他の部品(特にコネクター部)がやられてしまうのである。分解・組立は、できれば一発で決めたいところである。

大人のオモチャだと思えば、安いものであるが、それでも、直らないと気分は優れない。「これで、どうだ!」と思って操作してみると、上手くいかない、ガッカリ。このガッカリ感は、やってみた事のある方でないと分からない。

 

ヤフオクでも、「CR-185」の出品数は、桁違いに多い。裏を返せば、それだけ売れたと言う事であろうし、数年経過すると、ものの見事に故障してしまうという事でもある。正常に動作しているならば、簡単に手放す事も無いであろう。お気づきの方がいらっしゃるだろうか。「C-705シリーズ」のメンテナンス品は数多く出品されているが、「CR-185シリーズ」のメンテナンス品は、意外に少ない事を。何故? プロであっても、あらゆる故障を修理し、将来リスクを減じ、動作保証する事が難しいからだと想像する。そして、そんなに手間をかけ、リスクを背負い込むより、「C-705」や「C-722M」をメンテナンスした方が、確実だしビジネス・メリットも大きいからであろう。確かに、上記の様々な故障原因が存在し、時には、これらが重なり合って発症し、一ケ所を修理しても、改善されないか、次の症状を発症したりする。ところが、これらの原因を理論的に把握し、一つ一つを確実に排除していけば、ご機嫌になる事、間違い無し。アンプが付いていてCD/ラジオも聴け、音が良いとなれが、便利な事、この上無し。是非とも第十話までお付き合い願い、この愛くるしい「CR-185」の特性を知り、末永く、「トコトン」お付き合いして頂きたいものである。

 

尚、本内容については、弊方のこれまでの実作業を通しての経験に基づくものであり、理論的技術的裏付けがある訳ではありません。また、修理や分解およびその成果につきましても、メール等にてご相談は承りますが、あくまでも自己責任でお願いします。

 

 

次回から、本題に入ります。先ずは、本機でよく発症する「音飛び」についての、理由と対処方法です。
第二話:音飛びがする

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