朱鷺より危ない! 知られざる佐渡が紹介する
絶滅危惧種佐渡髭地鶏(17.11.3記)

 佐渡髭地鶏」とは
 【デジタル大辞泉プラス】鶏の品種のひとつ。新潟県の
 佐渡島で古くから飼育されてきた鶏で、顎の肉垂れの
 代わりに毛髭がある
のが特徴。日本農林規格の指定
 在来種。

 ところが、現在は、同ページで検索しても見当たらない。
 「環境省レッドリスト2017年」にも掲載されていない。
 「㈳日本種鶏孵卵協会:地鶏及びブロイラー肉の識別・
 評価方法」の3頁目最後の項:≪別表≫(定義されている
 在来種)に「佐渡髭地鶏」と記載がある。

 本当のところは、どうなっているのか

佐渡髭地鶏が危ない」と耳にしたのは2年前の事である。「清助」という佐渡では珍しいフレンチ・レストランで、デザートに出されたアイスクリームに使用していたのが「佐渡髭地鶏」の卵だという。マスター曰く「かなり、ヤバイ状況」との事。佐渡市を初めとして、様々な組織に働きかけたが、未だに埒があかないと言う。

絶滅の危機を招いた大きな要因は、「春の8時から10時の間しか卵を産まない」、「3日に1個位しか卵を産まない」や「孵化率が低い」など、元来、産卵能力が低い事に加えて、近交弱勢の影響も加わる。以前には、個体数が数羽まで減少した。危機感を抱いた「佐渡博物館」が中庭に鶏舎を作って種の保存に努め、現在は数10羽を確保するに至ったのだが、近交弱勢の影響が出ない訳がない。

これまでの佐渡髭地鶏を保存するための活動

2005年 佐渡ひげ地鶏保存会」および「佐渡地鶏ひげ生産組合」を結成
2006年 「鶏解体処理所」が完成
当時の記録では、生産者数:17名、原種個体数:100羽
2008年 「鶏人口受精技術研修会」を開催し、生産者の手による人口受精によって、個体数の増加に期待した。

そもそも、種の保存に必要な「最小存続可能個体数」は、近交弱勢や遺伝的多様性を配慮しない場合、500~1,000個体と言われている。つまり、生存個体数が1,000を下回り始めた時、種の存続が危ぶまれるのだ。ましてや、100羽を下回った状態ともなれば・・・、何をか言わん。
以上の状況に加え、絶滅への道に拍車をかけているのが、鳥インフルエンザと生産者の高齢化である。
(一番の問題は、これだけの絶滅危惧種でありながら、公的機関が何ら関わる事が無く、個人農家で飼育が行われている事だと思うのだが)
全国的に対策が取られている鳥インフルエンザだが、「地鶏」にとっては、大きな死活問題である。つまり、個人的な趣味で「地鶏」を飼うのであれば、「地鶏」本来の姿である、庭や畑を自由に走り回らせて育てても良いが、卵の販売を目的とするには、鳥インフルエンザ対策を講じる必要がある。つまりは、屋内飼育である。屋内飼育では、自分でエサ取りができないので、人工的なエサを作って、1日数回定期的に与える必要がある。ここに、高齢化の問題が重なる。生産者の殆どが、80歳を越える方達である。彼らが、風邪を引いて入院すれば、たちまちの内に、家で飼っている「佐渡髭地鶏」の生命が危ぶまれるのだ。夏でも薄氷の毎日である。

一昨年春に、生産者の一人にお会いする事ができ、「佐渡髭地鶏」の飼育舎を訪問した。冒頭の写真は、その時に撮影したものである。その年は、ヒナが3羽誕生し、元気に走り回っていた。昨年の春に、再びその方を訪問したのだが、誠に残念ながら、一昨年のヒナは育たなかったそうである。昨年は2羽のヒナが生まれていたが、それもどうなっているのか。なんとも切ないが、これが現実である以上、受け入れるしかない。
余談だが、その方は、「佐渡髭地鶏」の他にも「烏骨鶏」も育てていて、更には島内唯一の「合鴨農法」も行っている。数10年前に薬漬けの毎日だったのだが、そんな生活(体調)が嫌になり「完全無農薬」に取り組み始める。現在は、薬漬けの毎日から解放され、健康な体を取り戻した事が何より嬉しいそうである。これも余談だが、昨年に訪れた際に、一人で飼育舎の中を観察していると、1メートル以上もある「ヤシキヘビ」を見つけた。それも「佐渡髭地鶏」の囲いから数メートルしか離れていないところにである。すぐ脇にはヒナが飼育されている箱もある。ビックリして、その事を彼に伝えると、「分かった」と言って飼育舎の中に入り、足で「ヤシキヘビ」を追い払い、「ヤシキヘビ」は狭い暗闇の中に入っていった。それだけである。彼曰く「ヤシキヘビは家の守り神なので、追い出したりはしない」のだそうである。なんともはや。

佐渡髭地鶏の卵の謎

それでは、これだけ絶滅が危惧されている「佐渡髭地鶏」の卵を、何故、食べる事ができるのか。

正解は、佐渡の固有種である「佐渡髭地鶏」ではなく、これの血統を受け継ぐ量産種「佐渡地鶏・ひげ」の卵だからである。

「佐渡地鶏・ひげ」とは、「佐渡髭地鶏」の雄と米国原産の「ロードアイランドレッド」の雌を交配した種である。ところが、この交配種だけでは、「佐渡髭地鶏」の特徴である「髭」が小さいそうな。「佐渡髭地鶏」は劣勢遺伝なのか、それとも近交弱勢も影響しているのか。
従い、原種を維持しなければ、この「佐渡地鶏・ひげ」は、存続し得ないのである。言葉は悪いが、「佐渡地鶏・ひげ」は、使い捨てなのである。なんとも厄介な話である。

最後に

(1)佐渡髭地鶏よりも更に深刻なのが、国指定天然記念物にも指定されている「郡上地鶏」。その姿は、「紀元前3世紀頃に渡来した古代鶏に最
 も近いとされる日本最古の品種」とある。記事によれば、現存数は20羽。それでも、自治体などによる調査も行われていないそうである。
 どこも同じか。
(2)佐渡は、「日本のガラパゴス」と表現される様に、「佐渡髭地鶏」以外にも、「サドノウサギ」「サドカケス」「サドマイマイ」「サドア
 ザミ」・・・等々、沢山の佐渡固有種が存在するが、現個体数はどれ程なのか、個体数の増減推移がどうなっているのか、生育環境はどうな
 のかなど、「佐渡髭地鶏」以上に放置されていて、誰もその現状を知らないし、知ろうとも思わない。もしかすると、既に絶滅している種も
 あるかも知れまい。

国や行政は、保護活動をするための資金源が確保できずに、見て見ぬ振りをするしかないのだろう。個人的には、道路を直す費用の一部でもこちらに回した方が良いと思うのだが。先の生産者に聞いてみた、「佐渡市は、この状態をどう思っているの?」と。何と彼は、元佐渡市会議員だそうな。そして、「何を言っても意味がないよ」と。「そんな事をしても、選挙には勝てないから」とは言わなかったが。彼には、いつまでも健康で、長生きして欲しい、と心底思います。

最後にお願いです。これを読まれている皆様お一人お一人に、お願いです。この「佐渡髭地鶏」に、是非、「愛の手」を。そして、事ある毎に、「佐渡髭地鶏が危ない」と話を広めて下さい。資金に余裕のある方は、僅かな金額でも結構ですから、佐渡市に「佐渡髭地鶏の保存に使って下さい」と「ふるさと納税」を。金額ではなく、全国の皆様からの声が重要なんです。そうすれば、佐渡市や国も重い腰を上げるかも。

佐渡髭地鶏ギャラリー

2015年撮影 2015年撮影 2016年撮影(同じ親鶏、雄と雌) この中に佐渡髭地鶏のヒナが2羽いる

ご参考までに、愛知県新城市にある「豊橋飼料(株)」に、「佐渡髭地鶏」の剥製が保存(非公開)されている様です。

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